安っぽく悟ってはすぐに忘れる。
積み上げられた古雑誌の黄ばんだ山みたいに俺。
そこらじゅうに転がる予兆の種に
タバコの煙を噴き掛けては退屈な因果に従うだけの俺。
テレビの向こうでは刃物を振り回し
自宅に火を放ち、幼女を連れ回し
他人の善意をそ知らぬ顔で掠め取り続ける俺。
酔ったスーツ姿のくたびれたサラリーマンの
道端に吐いた痰に俺。
自分の認識するすべての世界の歪みは俺の歪みで
目をつむって耳をふさいで何も知らないふりで
棺桶のようなこの部屋に隠れているだけの俺。
たまの思いやりは思い上がり。
髪の毛に絡みつく自己嫌悪。
忘れる側と忘れ去られる側の忘れ去られる側で
いつも何かを忘れてる俺。
エサをやり忘れたペットの犬が部屋の片隅で
とうもろこしみたいに干乾びて動かない。
玄関では誰かがチャイムを鳴らす。
ふと忘れさられ自らも忘れようとしていた
自分という存在を暴力的に不愉快な高音で
呼び覚ますチャイムの音。きっとあれだ。
葬儀屋の出張の火葬のサービスの呼び出しだ。
火葬車の不規則な重たいエンジンの音がする。
焼いてもらおうか。自分自身を。
けれども焼け爛れる病んだ俺の皮膚から
立ち上るであろう悪臭に満ちた煙は
きっと近所迷惑な大気汚染となるだろう。
そんな理由で死ぬこともままならない。俺。
俺、俺、俺。俺という言葉を忘れてしまいたい。
みんなに忘れ去られてしまうその前に。俺。
- 2006/06/27(火) 12:27:42|
- 唄 |
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